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2021年 第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門15作品紹介(2/2)

第71回ベルリン国際映画祭

『バラード・オブ・ア・ホワイト・カウ(英題) / Ballad of a White Cow』

バラード・オブ・ア・ホワイト・カウ
『バラード・オブ・ア・ホワイト・カウ(英題) / Ballad of a White Cow』より -(C)Amin Jafari

製作国:イラン、フランス
監督:ベタシュ・サナイハマリアム・モガダム

【ストーリー】
イランのテヘランに住むミナは、死刑になった夫ババクが冤罪(えんざい)だったことを知る。当局は誤りを認めるがミナは理不尽な組織と戦っていくことにする。ある日、ミナのもとにババクに借りがあるというレザという男が現れる。2人は次第に親しくなるが、ミナは2人に関係のある恐ろしい秘密にまだ気づいていなかった。

【ここに注目】
『リスク・オブ・アシッド・レイン(英題) / Risk of Acid Rain』(2015)がイラン国内外の映画祭で上映されたベタシュ・サナイハ監督。そして、ジャファル・パナヒ監督による第63回本映画祭最優秀脚本賞受賞作『閉ざされたカーテン』(2013)に出演した女優のマリアム・モガダム。その2人が共同で監督を務める社会派ドラマ。モガダム監督が主人公のミナを演じる。米Varietyによると海外販売を担当するトーテム・フィルムズは作品について、「今日のイランにおける正義と正当性、独立心のための女性の闘争の物語」だと力を込めてアピールしている。

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『ドリフト・アウェイ(英題) / Drift Away』

ドリフト・アウェイ
『ドリフト・アウェイ(英題) / Drift Away』より -(C)Guy Ferrandis

製作国:フランス
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ

【ストーリー】
フランス・ノルマンディー地方にあるエトルタの憲兵隊で指揮官を務めるローランは、恋人のマリーとの結婚を控えている。仕事では日常的に深刻な犯罪を扱っていたものの、その職務に誇りを持っていた。ある日、EUの規制に対する抗議を繰り返していた農民のジュリアンが自殺を図る。ローランは彼を助けようとするが、殺してしまったことから人生が一変する。

【ここに注目】
神々と男たち』(2010)でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したグザヴィエ・ボーヴォワ監督が、ジャン=ピエール・ダルデンヌリュック・ダルデンヌ兄弟監督作品の常連俳優ジェレミー・レニエを主演に迎えたドラマ。平凡ながら幸せな主人公が、不幸な出来事により困難な状況を迎える。ボーヴォワ監督作品などで編集を担当し、監督の前作『田園の守り人たち』(2017)では出演もしていたマリー=ジュリー・マイユが主人公の恋人を演じる。撮影は、ボーヴォワ監督がパリから移り住んで10年以上になるというフランス北部の街ル・アーヴルで主に行われた。

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『ファビアン - ゴーイング・トゥ・ザ・ドッグス(英題) / Fabian - Going to the Dogs』

ファビアン - ゴーイング・トゥ・ザ・ドッグス
『ファビアン - ゴーイング・トゥ・ザ・ドッグス(英題) / Fabian - Going to the Dogs』より -(C)Hanno Lentz / Lupa Film

製作国:ドイツ
監督:ドミニク・グラフ

【ストーリー】
1931年、ワイマール共和国の首都ベルリンで暮らすファビアンは、日中はコピーライターとして働き、日が落ちると夜な夜な友人と怪しげな店が立ち並ぶ界隈をさまよい歩いていた。ある日、ファビアンはコーネリアと恋に落ち、彼女が堕落した彼の人生の唯一の希望になっていく。

【ここに注目】
児童文学小説「飛ぶ教室」などで知られる、エーリッヒ・ケストナーの小説「ファビアン あるモラリストの物語」を基に描く人間ドラマ。第一次世界大戦後のドイツではワイマール共和国が成立し、1920年代には首都ベルリンを中心に芸術文化が栄え「黄金の20年」とも呼ばれていた。『コーヒーをめぐる冒険』(2012)などのトム・シリングが主演する、退廃ムード漂う大都会を背景にした不安定な青年の物語が、不思議と現代の世相にもマッチする。

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『メモリー・ボックス(原題) / Memory Box』

メモリー・ボックス
『メモリー・ボックス(原題) / Memory Box』より -(C)Haut et Court - Abbout Productions - Micro_Scope

製作国:フランス、レバノン、カナダ、カタール
監督:ジョアナ・ハッジトマスハリール・ジョレイジュ

【ストーリー】
カナダ・モントリオール。クリスマス・イブの日、マイアにレバノンのベイルートから小包が届く。中にはカセットテープや写真などが入っていた。それは彼女がレバノンにいた10代のころ、内戦を逃れてフランスへ移住した親友に送ったものだった。マイアはそれを見ることを拒むが、娘のアレックスは我慢できず、そっと母親の思い出に目を通す。それは母の戦時中のベイルートでの苦難に満ちた青春の思い出だった。

【ここに注目】
ドキュメンタリーやフィクション、インスタレーションなど多彩な作品を手掛けてきた、レバノン出身のジョアナ・ハッジトマスとハリール・ジョレイジュ。映画監督としてカンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されたカトリーヌ・ドヌーヴ主演の『私は見たい』(2008)などを手掛け、2017年にはフランスで活動する若手アーティストに贈られるマルセル・デュシャン賞を受賞するなど、多方面で活躍する2人。本作で使われる日記やカセットテープはジョアナの、戦時中の写真はハリールの私物だという。

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『ネクスト・ドア(英題) / Next Door』

ネクスト・ドア
『ネクスト・ドア(英題) / Next Door』より -(C)Reiner Bajo

製作国:ドイツ
監督:ダニエル・ブリュール

【ストーリー】
映画スターのダニエルは、ベルリンのプレンツラウアー・ベルク地区にある、スタイリッシュなロフト・アパートメントで妻と2人の幼い息子、そして乳母と共に暮らしている。ハリウッド大作のオーディションに出かける前、彼が街角のバーに立ち寄ると、そこには長い間このチャンスを待ち続けたブルーノが座っていた。

【ここに注目】
国際派俳優として活躍する『ラッシュ/プライドと友情』(2013)などのダニエル・ブリュールが、初メガホンを取ったブラックコメディー。ヴォルフガング・ベッカー監督の『僕とカミンスキーの旅』(2015)に続いて脚本のダニエル・ケールマンとブリュールが組むのは2度目となる本作。突然恐怖のどん底に突き落とされる映画スターを映し出す。スペイン出身のドイツの有名俳優が監督と主演を務めた意欲作が、本映画祭でどのように評価されるか楽しみだ。

『プチ・ママン(原題) / Petite Maman』

プチ・ママン
『プチ・ママン(原題) / Petite Maman』より -(C)Lilies Films

製作国:フランス
監督:セリーヌ・シアマ

【ストーリー】
大好きだった祖母を亡くした8歳のネリーは、母親のマリオンが子どものころに過ごした家で、掃除を手伝ったり、家の中や母親がかつてツリーハウスを作ったという森を探検したりして過ごしていた。ある日、母親が突然いなくなり、ネリーは森でマリオンと名乗る同じ年の少女に出会う。

【ここに注目】
燃ゆる女の肖像』(2019)がカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞したセリーヌ・シアマ監督の長編5作目となるドラマ。本映画祭では2作目の『トムボーイ』(2011)がパノラマ部門でテディ賞(審査員特別賞)を受賞しているが、コンペティション部門では初のノミネートとなる。映画祭は本作について「テーマは彼女が得意とする『子どもと通過儀礼』。それにマジックリアリズムが交錯して、ストーリーテリングの中でとてもスムーズに展開していく」とコメントしている。

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『ワット・ドゥ・ウィー・シー・フェン・ウィー・ルック・アット・ザ・スカイ?(英題) / What Do We See When We Look at the Sky?』

ワット・ドゥ・ウィー・シー・フェン・ウィー・ルック・アット・ザ・スカイ?
『ワット・ドゥ・ウィー・シー・フェン・ウィー・ルック・アット・ザ・スカイ?(英題) / What Do We See When We Look at the Sky?』より -(C)Faraz Fesharaki / DFFB

製作国:ドイツ、ジョージア
監督:アレクサンドル・コベリゼ

【ストーリー】
ジョージアのクタイシの街で、若いリサとジョルジは校門の前で偶然ぶつかり、本が落ちた瞬間お互いに一目ぼれする。すっかりのぼせ上がった彼らは名前も名乗らないままデートの約束をし、恋に落ちた瞬間からすべての物事が生き生きと輝きだすのだった。

【ここに注目】
『ディア・フォール(原題) / Der Fall』(2013)などの短編を手掛けてきた、ジョージア出身のアレクサンドル・コベリゼ監督によるラブストーリー。短編『ヴァイオレット・アフターヌーン(原題) / Violet Afternoon』(2019)などのアニ・カルセラゼ、『ホリゾンティ(原題) / Horizonti』(2018)などのゲオルギ・ボホリシュヴィリらが出演。『放浪の画家 ピロスマニ』(1969)などのギオルギ・シェンゲラヤ、『皆さま、ごきげんよう』(2015)などのオタール・イオセリアーニら優れた監督たちを輩出してきたジョージアの新たな才能に期待がかかる。

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