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ガリレオ先生と内海薫に恋愛感情はある?名コンビの歩み

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 東野圭吾の累計1,500万部を超えるミステリーシリーズを福山雅治主演で連続ドラマ化した「ガリレオ」(2007・2013)の劇場版3弾となる『沈黙のパレード』(公開中)。本作で9年ぶりに復活する“変人ガリレオ”こと天才物理学者・湯川学(福山)と内海薫刑事(柴咲コウ)コンビ。微妙な距離感だった2人の関係が気になっていたが、今作で変化はあるのか? 観る前から気になることが多いのだが、ちょっとフライングして、ドラマシリーズ(シーズン1)、劇場版3作の監督を務めた西谷弘監督にあれこれ聞いてみた。(取材・文:編集部 石井百合子)

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【初めに……湯川学&内海薫はこんな人】

変わり者の天才物理学者 湯川学

 帝都大学の教授。劇場版第2作『真夏の方程式』(2013)では准教授だったが、『沈黙のパレード』では教授となっている。変人でありながら天才的な頭脳を持つ物理学者。刑事・草薙(北村一輝)と大学時代の同級生だったことから、常識では「ありえない」事件が発生するたびに、捜査に巻き込まれるように。「現象には必ず理由がある」をモットーとし、内海らから「ありえない」のワードが出ると過剰に反応する。口癖は「実に面白い」「さっぱりわからない」。捜査中に何か閃くと所かまわず数式を書きなぐりながら考えをまとめる習性がある。大学時代はバドミントン部で、スポーツ万能。好きな食べ物はインスタントコーヒー、納豆など。子供が苦手でそばに寄られるとじんましんが出るほどだが、『真夏の方程式』では海が見たいという少年の願いを驚くべき方法でかなえ、なつかれていた。

直情型の熱血刑事 内海薫

 警視庁捜査一課の刑事。正義感が強く、感情の起伏が激しい。交通課時代には、囮になって痴漢犯65人を逮捕した実績があり、先輩の草薙にあこがれて捜査課に転属。その草薙の紹介により、捜査に行き詰まると度々湯川の研究室を訪れ協力を求めるようになる。あまりに頻度が高いため、学生たちの間で二人が恋愛関係にあると噂されることも。湯川に「根拠は?」と尋ねられると「刑事の勘」と答え、「実に非論理的だ」とあきれられることもあったがその勘は確かと言える。シーズン2の初回でオクラホマでの研修(オカルト関連)に発った。後任の岸谷刑事(吉高由里子)にバトンタッチしたのちも、湯川にティラノサウルスの模型などの土産を送っていた。

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【西谷弘監督に聞く!湯川と内海の関係】

「内海の誕生はドラマきっかけ説」は本当?

 「もともと原作では湯川と草薙のバディ。個人的には好きでしたね。ただ、月9枠ということでヒロインを立てたいと求められ、東野先生はすぐに快諾してくださいました。ただし「そのヒロインをネーミングも含めて、一度書かせてほしい」と。先生の手により“内海薫”という女性刑事が誕生したのです。同時にヒロインのキャスティングに柴咲コウさんの名前が上がってました。小説の中で内海薫に“目力の強さ”という表現がありましたが、まさに柴咲さんそのものでしたね。連続ドラマの内海はやや直線的な動きをつけましたが、柴咲さんの繊細な表現力が単なる線ではなく、よく見ると細かいうねりのある直線という深みを与えてくれたのを覚えています」

湯川と内海はズバリどんな関係?

 「いつも内海は湯川に振り回されっぱなしの構図に見られがちですが、実はそれだけでもないんです。連続ドラマのシーズン1の初回で、内海は湯川に2度戦いを挑んでます。第1ラウンドは湯川の余りにも人の死を軽んじたような発言にキレる内海。本気で湯川を叱ります。湯川の心は密かに揺らぎます。第2ラウンドは湯川を捜査に引っぱり出すため、内海が刑事になる動機となった悲しい生い立ちを話し、情に訴えかけます。実はその生い立ちは作り話というか、海外の刑事ドラマのパクリ。湯川はまんまと騙され、事件現場へと向かわされる。ドラマの初回にして、湯川は内海に奇しくも二敗している(笑)。2人の関係は、実はイーブンで始まっているのです。だから、この2人を見ていると時にヒリヒリさせられて、時にしっとりと心に響き、そして、いつも笑えるのだと。もし、この先、ガリレオシリーズが続いていくならば、この互角の関係を永遠に撮り続けていきたいと思いますね」

湯川と内海に男女の感情はない?

 「少なくとも僕の中では“この二人には恋愛の欠片もない”という作り方はしていません。事件への向き合い方はまるで違う二人ですが、長年同じ方向を見てきた者同士。心が通っていなければここまで続かなかったでしょう。いつも湯川は非論理的だから子供は苦手だと言っています。内海は『刑事の勘』とよく口にします。勘こそ非論理的極まりない言葉ですが、それでも共に行動しているのは、湯川が内海を苦手としていない証拠。もちろん、勘は苦しまぎれの強がりと解釈しています。一方の内海も湯川の思考へは最大のリスペクトがあり、科学者としての正義、優しさもわかっている。彼女にとって一番素直に向き合える相手なのだと思います。二人の丁々発止も傍から見ればイチャイチャしているようにも思えてくる(笑)。「もう、つき合っちゃえば」と観客からの声が聞こえたら、それはそれで幸せなのかもしれませんね」

『沈黙のパレード』の湯川と内海、どう変わった?

 「よく湯川は“変わらない”“ブレない”と思われがちですが、そんなことはありません。彼の言葉を借りれば「仮説を立て、それを実証して初めて真実が分かる」と、それは彼の人生そのものだと思います。経験から考え方や生き方を探り、試し、科学者として進化を求めて変わり続けているのです。今回、『沈黙』というキーワードと科学をどう結びつけられるのかと考えてみました。沈黙は表裏だと。『雄弁は銀、沈黙は金』と諺にありますが、この映画では沈黙は悪に変えられてしまう。そして、愛が沈黙を生みだすこともあると。そう考えたときに原爆の父と言われるロバート・オッペンハイマーの「科学者は罪を知った」という言葉を思い出しました。要は科学者が良かれと思って発明したものが、思わぬ形で悪用されてしまう。つまり物理学者・湯川は常にそういう宿命と隣り合わせに進化しながら生きてるのだと思います。若き日の内海は警察の猛者たちに囲まれ、さらに湯川と草薙の間で右往左往してきました。しかし、今回は刑事として、人として、すっかり逞しくなって帰ってきた姿をたっぷりとお見せできます。内海薫という女性は正義感に溢れ、人一倍感受性の強い人。たくさんの壁にぶち当たり傷つきもしてきたのだと思います。だからこそ、湯川と草薙の間にどっしりと立ち、先程も触れたようにコネクトしづらい男たちを見事に交わらせた。内海の存在なしでは語れない物語だったと思います」

2人の関係は変わっている?

 「湯川と内海のそれぞれの変化、成長も見せたいところではありますが、それ以上に描きたかったのは“あの頃と変わらぬ二人”でした。久しぶりの二人の最初のセッションは、ファミレスでのシーン。内海は今回の事件に苦悩する草薙を放っておけずに、彼の親友でもある湯川に救いを求めます。しかし、相変わらずつれない湯川の態度に『血も涙もない』と嘆き、キレる内海。当初はこの台詞でシーンを終わる予定でしたが、その時、連続ドラマ第一話の2人の名シーン『きみは犬のウンチだ』を思い出したんですよね(笑)。そこで、内海の言葉に負けじと『血も涙もない』を語りだす湯川の変人ぶりや、内海との丁々発止を再び呼び起こしたいと思いました。そして、いよいよ撮影本番日。いつものようにテストから始まりますが、すでに福山さんと柴咲さんの芝居は“あの頃と変わらぬ二人”に戻ってました。『本番いこうか』とスタッフ側へ振り返ったとき、皆の高揚感が熱く伝わってきたんです。『容疑者xの献身』からのベテランスタッフは郷愁を抱き、映画やドラマでしか知らない若きスタッフは『本物だ!』と生へのときめきを感じていましたね。クランクインから数日後の現場でしたが“この映画はイケる”と自信を持てた瞬間でした」

 連続ドラマシーズン1の最終話ではクリスマスの日、爆死しそうになった内海を湯川が無我夢中で助け、劇場版第1作『容疑者xの献身』では湯川が内海に「友人として聞いてくれるか……?」と、大切な存在を守るために握りつぶそうとしていた真実を語り出す場面があった。内海はドラマがきっかけで誕生したキャラクターだが、真っすぐでひたむきな彼女に湯川が意図せずして揺さぶられる場面こそ、小説版の趣とはまた違ったドラマ・映画版ならではの魅力ではないだろうか。

(C)2022「沈黙のパレード」製作委員会

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