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あなたはどっち派!?日韓・韓日リメイクヒット映画見比べ

 これまでもお隣の韓国との日韓(韓日)リメイク映画は多数製作されてきた。王道のラブストーリーだけでなく、コメディーやサスペンスから人間ドラマまで、バラエティーに富んだリメイク作品が作られている。それぞれの国でヒットした作品がリメイクされることも多く、オリジナル作品の魅力を生かしつつ、お互いのお国柄を鑑みながら、観客が共感できるよう舞台やキャラクター設定をアレンジするのもリメイク版の腕の見せどころ。これまでも切磋琢磨しながら成長してきた日韓の映画人たちによる、傑作映画を紹介する。(文・平野敦子)

きみの瞳が問いかけている
視力を失った女と罪を犯し夢を失った男の過酷な恋愛『きみの瞳が問いかけている』より (C) 2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会 (C) 2020 Gaga Corporation / AMUSE,Inc. / Lawson Entertainment,Inc.
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ひねりの効いたラブストーリー

韓国版映画『ただ君だけ』(2011)/『きみの瞳が問いかけている』(2020)

 ドラマ「ごめん、愛してる」などのソ・ジソブとドラマ「トンイ」などのハン・ヒョジュによる韓国映画『ただ君だけ』を、吉高由里子横浜流星のダブル主演でリメイクした『きみの瞳が問いかけている』(10月23日公開)。一見美男美女による定番のラブストーリーかとかと思いきや、実はストーリーに意外なひねりが効いているのがミソだ。

 前半ではスネに傷を持つ元キックボクサーの塁(横浜流星)と、不慮の事故で家族と視力を失った明香里(吉高由里子)のほのぼのした純愛が描かれ、後半では愛する人の目の手術代を稼ぐため、命を賭けて賭博試合に挑む塁の、本気度マックスのキックボクシングシーンも映し出される。横浜は中学時代、極真空手で世界チャンピオンになったほどの実力の持ち主で、その身体能力の高さを存分に生かした、迫力のファイトシーンも見どころのひとつだ。

 ストーリーはほぼオリジナルに忠実だが、ちょっとした設定が異なっているのも見逃せない。笑っていてもどこか寂しげなソ・ジソブか、それとも超イケメンだがじつは骨太の横浜流星か!? どちらの男性に軍杯を上げるか悩ましいところだ。

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上質のサスペンス

韓国版映画『ブラインド』(2011) / 『見えない目撃者』(2019)

 盲目の女性が主人公の韓国映画『ブラインド』を、吉岡里帆高杉真宙のコンビでリメイクしたのが『見えない目撃者』だ。本作はかつて警察官として明るい未来を約束されながらも、自身の過失による交通事故で弟と視力を失った元警察官の浜中なつめ(吉岡里帆)とある事故現場にいた高校生・春馬(高杉真宙)が、誘拐事件の解決に力を尽くすサスペンスになっている。

 日本でリメイクされる以前に、中国でもリメイク版が製作されていることからも、本作の人気の高さがうかがえる。とはいえ犯人の正体や顔が終盤近くまで明かされない日本版と、序盤ですでに犯人の顔が明かされる韓国版や中国版には、大きな違いがある。日本版では高杉真宙が演じている役を、中国版では人気アイドルグループEXOの元メンバーのルハンが演じていることもあり、中国版にはアイドル映画的な部分があるのも否めない。

 日本版では細かい犯人像やトリックなどにも徹底的にこだわり、より上質なサスペンスに仕上がっている。劇中で主人公の目となり活躍する盲導犬の扱いにも、日本版と韓国版や中国版には大きな違いがあるので、その辺りも注意して観てみたいところ。

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日韓人気俳優比較

『ゴールデンスランバー』(2009) / 韓国版映画『ゴールデンスランバー』(2018)

 スリリングな展開という意味では、伊坂幸太郎のベストセラー小説を原作にした『ゴールデンスランバー』が挙げられる。細かい違いはあるものの、日本版と韓国版の設定はほぼ同じだ。日本版では今やドラマ「半沢直樹」でアジア席巻した堺雅人、韓国版では『華麗なるリベンジ』(2016)などのカン・ドンウォンが主演し、首相暗殺(韓国版では時期大統領候補)の濡れ衣を着せられた宅配ドライバーが、必死の逃避行を展開する。

 主人公の青柳役を演じた堺雅人は日本人男性の平均的な身長なので、目立たずに人ごみに紛れるのも可能だが、韓国版で主人公のゴヌ役を演じたカン・ドンウォンは、身長186センチでスラリとしたモデル体型なので同じようにはいかない。韓国版は彼の身体能力の高さを生かし、ゴヌがソウル市内を駆け巡りながら下水道に逃げ込んだり、ソウル中心部で大規模な車両爆発が起きたりする、アクション作品に仕上がっている。

 ごく平凡な市民が友人たちの協力を得て地道に逃げ回る日本版か、はたまたド派手な韓国版か!? エンディングの違いも、観る側によって好みが別れそうだ。

『ゴールデンスランバー』の作品情報はこちら>>
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腕利きの殺し屋の悲哀

『鍵泥棒のメソッド』(2012) / 韓国版映画『LUCK-KEY/ラッキー』(2016)

 ドラマ「半沢直樹」でも共演し、敵対しながらも名コンビぶりをみせる、堺雅人と香川照之共演の『鍵泥棒のメソッド』は、『LUCK-KEY/ラッキー』としてリメイク。銭湯でせっけんを踏んで転倒し、記憶喪失になった腕利きの殺し屋と、売れない役者が入れ替わるという設定は同じ。

 日本版では香川照之が演じた殺し屋を、韓国では名バイプレイヤーとして知られるユ・へジンが熱演。日本版よりテンポの良い爆笑コメディーになっている。『鍵泥棒のメソッド』では記憶を失くしたスゴ腕の殺し屋「コンドウ」こと山崎信一郎(香川照之)が、自分を桜井武史(堺雅人)だと思い込み、真面目に自分探しをするあたりに中年男性の悲哀が漂う。

 一方、ヒョンウク(ユ・へジン)は記憶がなくともプロの殺し屋だけあり、体が勝手に動いて思いがけずに相手を倒してしまう活躍ぶり。キレのいいアクションも、さすが生身のアクションを得意とする韓国だけある。

 日本版は登場人物たちの動向を丁寧に描き、先の展開をハラハラしながら観る作品で、韓国版はオリジナル版を踏襲しながらも、韓国らしい軽快な笑いとアクションてんこ盛りの、エンターテインメント作品に仕上がっている。

『鍵泥棒のメソッド』の作品情報はこちら>>
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最強のおばあちゃん登場

韓国版映画『怪しい彼女』(2014) / 『あやしい彼女』(2016)

 韓国の有名なコメディーといえば、中国やベトナムやタイなどでもリメイクされて話題になった『怪しい彼女』がある。皮肉屋で口が悪く、超頑固者の70歳のおばあちゃんマルスン(ナ・ムニ)が、ある日突然20歳の自分(シム・ウンギョン)に若返ってしまうことから始まるドタバタ劇はことのほかドラマチック。

 激動の人生を歩んできた一人の女性の姿に時に笑い、時に泣く。中身は70歳のおばあちゃんなのに、外見は20歳のヒロインの強烈なギャップにも大笑い。最近は松坂桃李とダブル主演した『新聞記者』(2019)や、夏帆と共演した『ブルーアワーにぶっ飛ばす』(2019)などで日本映画にも出演するシム・ウンギョンの、アクの強いおばあちゃんぶりは必見だ。

 日本版では20歳の主人公・大鳥節子を多部未華子、73歳のカツおばあちゃんを倍賞美津子が演じ、多部は透き通るような美しい歌声で懐メロも披露。節子と共にバンド活動をする孫の翼を、ダンスロックバンド・DISH//の活動だけでなく、『とんかつDJアゲ太郎』『さくら』などの公開が控え、俳優としても注目を集める北村匠海が演じている。『WALKING MAN』(2019)などの野村周平も意外な場面で登場し、先日亡くなった名バイプレイヤーの志賀廣太郎さんも、カツの幼なじみとして出演している。

 どこの国にも世代間のギャップは存在するのだが、結局人間の本質的な魅力というのは年齢とは関係ないことを、この2作品が証明している。

韓国版『怪しい彼女』の作品情報はこちら>>
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「食」の楽しみと大切さを伝える

『リトル・フォレスト 夏・秋』(2014)・『リトル・フォレスト 冬・春』(2015) / 韓国版映画『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(2018)

 『重力ピエロ』(2009)、『見えない目撃者』などの森淳一監督がメガホンを取り、五十嵐大介の人気コミックを原作に実写映画化した『リトル・フォレスト 夏・秋』『リトル・フォレスト 冬・春』。都会の生活になじめず故郷の東北に戻ったいち子(橋本愛)が、自給自足に近い生活を送るうちに、生きる力を取り戻していく姿を二部構成で映し出す。

 主人公の友人役として、ドラマ 「おカネの切れ目が恋のはじまり」や、映画『蜜蜂と遠雷』(2019)などの松岡茉優が共演。

 本作の魅力は豊かな大自然の中で、いち子が手作りする素朴な料理の数々で、主演の橋本愛は撮影前から現地入りして役作りに励み、農業や料理を作るシーンなどもすべて吹替なしで演じている。

 韓国版では『お嬢さん』(2016)で長編デビューしたキム・テリが主人公を演じ、『リトル・フォレスト 春夏秋冬』としてリメイク。すべてを捨てて都会から故郷に戻って来たへウォン(キム・テリ)が、移ろいゆく四季折々の風景の中、自分で農作物を育て、近所で採れる自然の恵みを生かし、日々丁寧な「食」を心がけるうちに、次第に本来の輝きを取り戻していく。

 橋本愛同様キム・テリも、吹替なしで調理シーンを演じている。もともと「医食同源」の考えが生活に根付いている韓国ならではの、素朴で、おいしくて、体にいいものが次から次へと登場するのも楽しみだ。

『リトル・フォレスト 夏・秋』の作品情報はこちら>>
『リトル・フォレスト 冬・春』の作品情報はこちら>>
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永遠に消えることのない珠玉のラブストーリー

韓国版映画『八月のクリスマス』(1998) / 『8月のクリスマス』(2005)

 日本で韓国映画ブームの火付け役の1作となった純愛映画『八月のクリスマス』。本作でデビューを飾ったホ・ジノ監督が、余命わずかなジョンウォン(ハン・ソッキュ)と、彼が営む写真館をたまたま訪れた駐車違反取締員タリム(シム・ウナ)との純愛を描く。

 「死」という重いテーマに向き合いながらも、韓国映画の定番とも言える「純愛」「悲恋」をキーワードに切ない恋心を丁寧に描き、鑑賞後にはさわやかな余韻を残す。映画を観た観客を大切な人に会いたくていても立ってもいられない気分にさせる、ラブストーリーの傑作だ。その作品をプロの俳優でなく、ミュージシャンの山崎まさよしを起用してリメイクしたのが日本版の『8月のクリスマス』だ。

 写真館を営む余命いくばくもない寿俊(山崎まさよし)と、小学校の臨時教諭の由紀子(関めぐみ)の決して実ることのない純愛を描く。人物の設定が多少異なるものの、日本版は韓国版のストーリーをほぼ忠実になぞっている。だが、ラストの「手紙」のシーンが日韓では大きく異なっていて、その受け止め方によって、オリジナルとリメイクの好き嫌いが分かれるところだろう。

韓国版『八月のクリスマス』の作品情報はこちら>>
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