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永遠の童顔イライジャ・ウッド、芸歴30年越えの俳優人生

あの人は今

 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのフロド役で世界的人気スターになったイライジャ・ウッドも、今や39歳。子役出身で人気スターに登りつめ、その後の俳優人生は? プライベートは秘密主義を貫きつつも、人生の転機が訪れていたようです。(文・平沢薫)

7歳で子役デビュー!ブルーの大きな目がキュート

イライジャ・ウッド
ブルーの瞳が美しい! J. Vespa / WireImage / Getty Images

 イライジャは1981年1月28日、アイオワ州生まれ。7歳上の兄ザックと2歳年下の妹ハンナがいる3人兄妹の真ん中です。両親はデリカテッセンを経営していて、母親はイライジャが幼い頃から地元の子役エージェンシーに登録。大きなブルーの目がキュートなイライジャは、最初からかなり順調にキャリアをスタートさせました。

 初めての仕事は7歳の時。当時の人気ミュージシャン、ポーラ・アブドゥルのミュージックビデオ「Forever Your Girl」に出演しますが、このときの監督は、後に『セブン』(1995)で人気監督になるデヴィッド・フィンチャーでした。そして、映画デビューは8歳、作品は大ヒット作の続編『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(1989)。カフェにいるビデオゲームで遊ぶ少年の役で出演しています。

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イライジャ・ウッド
『わが心のボルチモア』より。TriStar Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 その後もキャリアは順調で、その翌年の1990年に出演したバリー・レヴィンソン監督の『わが心のボルチモア』は、イライジャが演じる少年の回想で物語が描かれるので、いわば主演。1993年には『危険な遊び』で、当時『ホームアローン』で人気絶頂だったマコーレー・カルキンとダブル主演といえる堂々の共演。この映画でサターン賞若手俳優賞を受賞しました。その後も、カンヌ映画祭のパルムドール候補となったアン・リー監督の『アイス・ストーム』(1997)、大ヒット・ディザスター映画『ディープ・インパクト』(1998)と、文芸作から娯楽作まで幅広く活躍しました。

『ロード・オブ・ザ・リング』で世界的人気スターに!

『ロード・オブ・ザ・リング』より。New Line Cinema / Photofest / ゲッティ イメージズ

 そんなイライジャが、映画ファンだけでなく世界中に知られるようになったのは、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001~3)の主人公フロドを演じてから。そもそもこの映画の原作は、世界中に熱狂的なファンを持つJ・R・R・トールキンの名作ファンタジー小説「指輪物語」。映画は、熱狂的な原作ファンたちが気にいならなかったら批判しようと待ち構える中で公開されましたが、実は監督も脚本家も昔から原作の大ファンでもあり、原作ファンたちの心を掴んで映画は世界的に大ヒット。イライジャが演じた主人公フロドも絶賛されて、イライジャの名前が世界中に知れ渡るようになったのでした。

イライジャ・ウッド
『ロード・オブ・ザ・リング』の仲間たちと! Kevin Mazur / WireImage / Getty Images

 イライジャ自身もこの映画が大好きで、彼自身が映画のオフィシャル・ファンクラブの第1号になったのは有名な話。物語のキーとなる指輪の小道具2つのうち、一つは映画の中で指輪を最後まで追い求めたゴラムを演じた俳優アンディ・サーキスが手に入れましたが、もう一つはイライジャのものに。彼は映画公開から10年以上経った2014年のガーディアン紙のインタビューでも、自分が持っている宝物は何かと問われて、この指輪だと答えています。

 そんな大ヒット作に出演してしまうと、その後は似たような出演作ばかり増えてしまいがちですが、イライジャはその落とし穴に陥りませんでした。その後は、ミシェル・ゴンドリー監督のユニークなインディ映画『エターナル・サンシャイン』(2004)ではヒロインに恋する青年を演じ、ロバート・ロドリゲス監督のアメコミ映画『シン・シティ』(2005)で不気味な悪役にふんしたり、英国のサッカーの熱狂的なサポーターたちの文化を描く『フーリガン』(2005)に主演したりなど、さまざまな映画に出演。その活躍ぶりが評価されて、2008年のエンターテインメント・ウィークリー誌の「30歳以下の注目すべき男優」リストでは、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(2007)の全米大ヒット直後で注目を集めていたマイケル・セラに続き、第2位に選ばれました。

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ホラー映画の制作会社を設立!ニコラス・ケイジのあの映画も

 とはいえ、もしもイライジャが俳優業にだけ専念していたら、厳しい状況が待っていたかもしれません。39歳になった現在も、顔立ちは『ロード~』のフロドとあまり変わらず、彼の実年齢と同じ年代の普通の男性を演じるには、この容ぼうが難点になったかも?

左から、イライジャ、ダニエル・ノア、ジョシュ・C・ウォーラー。Jeff Vespa / WireImage / Getty Images

 そんな状況を、イライジャ自身が早くから予測していたのではないでしょうか。彼は2010年、29歳で映画制作会社スペクトルヴィジョンを立ち上げています。共通の友人を介して知り合った映画監督2人、ダニエル・ノアジョシュ・C・ウォーラーが自分と同じセンスを持っていることを知り、一緒に会社を設立。この会社でホラー映画の話題作を続々世に送り出しています。

 キュートなイメージのイライジャとホラー映画は、ちょっと意外な組合せですが、実はイライジャは子どもの頃からホラー映画が大好き。映画情報サイトBloody Disgustingのインタビューによれば、6、7歳の頃、お母さんにはホラー映画を観るのを禁じられていましたが、7歳年上のお兄さんがよく友だちと一緒にビデオでホラー映画を観ていたので、イライジャもお母さんに内緒で一緒に観ていたそうです。

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『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』のポスター。Kino Lorber / Photofest / ゲッティ イメージズ

 そんなイライジャの制作会社が注目を集めたのは、2014年に制作したホラー映画。イランを舞台にペルシャ語で女性ヴァンパイアを描いた『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』(2014)が話題を集め、サンダンス映画祭NEXT部門に出品されたほか、ゴッサム・インディペンデント映画賞やシッチェス・カタロニア国際映画祭などで数々の賞を受賞しました。イライジャはサンダンス映画祭での上映に同席したときのことを、映画情報サイトIndie Wireのインタビューで「あの時のことは今後も絶対に忘れない。僕の生涯の中でもっとも感動的な瞬間の一つだった」と語っています。

 イライジャはほかにも、ニコラス・ケイジ演じる主人公の設定が実在のカルト教祖チャールズ・マンソンに似ていると話題になった『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2017)や、同じケイジ主演でクトゥルフ神話の創始者H・P・ラブクラフトの同名小説を映画化した『カラー・アウト・オブ・スペース(原題) / Color Out of Space』(2019)など話題作を続々に制作。イライジャは、今やホラー映画のプロデューサーとしても腕を振るっています。

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『ゾンビスクール!』より Lionsgate / Photofest / ゲッティ イメージズ

 もちろん、イライジャは俳優としても活躍中ですが、『グランドピアノ 狙われた黒鍵』(2013)、『ゾンビスクール!』(2014)、『ラスト・ウィッチ・ハンター』(2015)と、出演作もホラー系の作品が増えているような? 

 ちなみにイライジャのホラー映画の好みはというと、2014年に映画情報サイトDeciderのインタビューで彼があげた「Netflixで観られるホラー映画ベスト5」の第1位はピーター・ジャクソン監督の『さまよう魂たち』(1996)。2位以降には、その後『シンクロナイズドモンスター』(2016)を撮るナチョ・ビガロンドら新鋭監督が結集したオムニバス『ABC・オブ・デス』(2012)、ミゲル・アンヘル・ビバス監督のスペイン製ホラー『スペイン一家監禁事件』(2010)、ハリウッドのリメイク版ではなくスウェーデン映画の『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)、クライヴ・バーカーの人気小説を映画化した『ヘル・レイザー』(1987)を挙げています。イライジャは、ちょっとマニアックなホラー映画が好きなのかも?

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ハリウッドの児童虐待問題について発言も

イライジャ・ウッド
子役時代のおちゃめなイライジャ。Steve Starr / CORBIS / Corbis via Getty Images

 そんなイライジャには、彼の社会的意識の高さと勇気を感じさせるエピソードがあります。それは、2016年、BBCの人気司会者ジミー・サヴィルによる児童への性的虐待疑惑が報じられて注目を浴びたときのことでした。この疑惑の大半は1970年代に起きたもので、最年少の被害者は8歳、被害者は72人にのぼると報じられました。性的虐待を告発する #MeToo運動は2017年のハーベイ・ワインスタインによるセクハラや性的暴行事件以降に大きな運動になりましたが、当時は有名人が性的虐待について語ることはほとんどありませんでした。そんな中で、当時35歳のイライジャはハリウッドでの児童への性的虐待について語ったのです。

 イライジャはサンデー・タイムス紙の取材で、「ハリウッドでも同じようなことは起きています。それは組織的なものです。しかし犠牲者はそれについて大声で語ることができません。起きていることを明らかにしようとすると、悲劇が起きます。彼らは押しつぶされて、修復不能なほどダメージを受けてしまうんです」と語りました。

 でも、ご安心を。イライジャ自身は、母によって虐待から守られていたとのこと。「母は、僕のキャリアよりも、僕が良い人間になることを重視して育ててくれました。だから僕はそういうことが起きるようなパーティーには、行ったことがない。この奇妙な業界には、さまざまな誘惑があります。例えば家族のようなしっかりした基盤を持っていないと、それに対処していくことが難しいんです」と発言しています。

 誰もが知っているハリウッドの人気子役だったイライジャのこの発言は、当時、大きな注目を集めました。こうしたイライジャの行動は、その後の #MeToo運動にも影響を与えたのではないでしょうか。

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私生活では赤ちゃんが誕生!

イライジャ・ウッド
2006年当時の恋人パメラ・ラシーンとラブラブなイライジャ。Francois Durand / Getty Images

 イライジャは、ハリウッドの人気スターなのに、交際の噂はあまりなく、以前に噂になったのは『17歳 ~体験白書~』(2002)で共演したドイツ女優フランカ・ポテンテと、『僕の大事なコレクション』(2005)で共演したパメラ・ラシーンくらい。パメラとは2005年から交際しましたが、2010年に破局が報じられています。

 2020年2月に、映画プロデューサー、メッテ=マリー・カッツとの間に、初めての赤ちゃんの誕生が報じられました。イライジャとメッテは、彼が出演した映画『この世に私の居場所なんてない』(2017)のスタッフとしてメッテが参加していたことから出会い、2018年から交際が報じられていました。そして、2019年7月には、2人の婚約と、メッテの妊娠がニュースに。イライジャは私生活については公表しない方針なので、2人の結婚の有無や、赤ちゃんの誕生日、性別、名前などは未発表ですが、2020年2月にメッテのお腹が平らになっていたことから、赤ちゃんが生まれたことが明らかになったのでした。

 イライジャの私生活を公表しない方針は、彼が住んでいる場所からもよくわかります。彼は2013年に、それまで住んでいたカリフォルニア州サンタモニカから、テキサス州オースティンへと引っ越して、この土地にあるヴィクトリア様式の大きな家に住んでいます。イライジャは引っ越した理由についてフォーブス誌(電子版)のインタビューで「今はどこにいても映画が撮れる時代だから」と語っていますが、それだけではなく、ロサンゼルスの慌ただしい業界から距離を置いた生活の方が、彼の好みに合っているのかもしれません。

イライジャ・ウッド
ノリノリだぜぇい!Tom Briglia / Getty Images

 私生活重視といえば、イライジャは趣味の音楽も大切にしています。彼はピアノが弾けて、声楽も学んだ経験あり。マイアミ・ニュース・タイムズ紙によると、今も時々愛蔵の4,000枚以上のレコードを使ってクラブでDJをして楽しんでいると報じられています。また、今は映画製作に力を注いでいるので休止中ですが、2007年には自分のレーベル、シミアン・レコーズを設立して、アップルズ・イン・ステレオなどのアルバムをリリースしていました。

イライジャ・ウッド
『プライス -戦慄の報酬-』のイベントにて。Paul Archuleta / Getty Images

 そして今後も仕事は順調。出演作では、奇妙な父親との関係に悩む息子を演じるホラー映画『プライス -戦慄の報酬-』が2020年2月に日本で公開され、続いてビデオゲームの世界を描く新作クライム映画『L.A.ラッシュ(原題) / L.A. Rush』に出演。プロデュース業では1984年の名作ホラー『エルム街の悪夢』のリブート作を企画中。お父さんになったイライジャの今後の活躍も楽しみです。

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