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間違いなしの神配信映画『オクジャ/okja』Netflix

神配信映画

賞をにぎわせた王道編 連載第5回(全8回)

 ここ最近ネット配信映画に名作が増えてきた。NetflixやAmazonなどのオリジナルを含め、劇場未公開映画でネット視聴できるハズレなしの鉄板映画を紹介する。今回はアワードシーンをにぎわせた王道編。全8作品、毎日1作品のレビューをお送りする。

現代社会の食や企業倫理に切り込んだポン・ジュノワールド

『オクジャ/okja』
『オクジャ/okja』より

『オクジャ/okja』Netflix

上映時間:121分

監督:ポン・ジュノ

キャスト:ティルダ・スウィントンジェイク・ギレンホールアン・ソヒョン

 強い作家性を持つ映画監督が多い印象のある韓国映画界の中でも、ポン・ジュノ監督は独創性と表現力に優れ、世界的な評価を獲得する突出した存在だ。ダークファンタジーに分類されるだろう本作『オクジャ/okja』ではその才能が、過激な表現をすることが可能なNetflixオリジナル映画という舞台で、いままで以上に発揮されている。

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『オクジャ/okja』
『オクジャ/okja』より

 本作に登場するのは、多国籍企業が未来の食肉用家畜として世界の農場で育てさせた、巨大なカバのような姿のスーパーピッグ。韓国の山奥で10年育てられたメスの個体「オクジャ」は巨大に成長し、アメリカへと運ばれることになる。

 運ばれていく家畜を、農業を営む人が泣く泣く送り出すような光景は、テレビ番組の取材映像などで目にするが、オクジャとともに育ち、仲の良い姉妹のような愛情で結ばれた農家の少女ミジャ(アン・ソヒョン)は、輸送されていくオクジャを取り戻すために走り出し、走行するトラックにしがみつく。

『オクジャ/okja』
『オクジャ/okja』より

 ジュノ監督は、説得力のあるアクション演出で荒唐無稽な展開にリアリティーを与えている。坂道をショートカットしながらトラックを追跡するミジャを真上からの構図でとらえた場面や、トンネルと車高の隙間を利用したアクション描写、またガラスに激突する際のあっと言わせるような演出など、ひとつひとつのシーンに冴えたセンスと考え抜かれたアイデアが生かされている。このように娯楽とアーティスティックな感覚が高いレベルで絡み合うのが、ジュノ監督の映画なのだ。

『オクジャ/okja』
『オクジャ/okja』より

 しかし、本作はそれだけで終わらない。『オクジャ/okja』がダークファンタジーたる理由は、食肉産業界で繰り返される凄惨(せいさん)な行為を描く場面が存在するからだ。とは言えそこで展開される目を覆いたくなる光景は、現実の家畜たちにとって、またそこで働く人たちにとっての日常そのものといえる。リアルなCGによって、躍動感にあふれ感情豊かに表現されていたオクジャの姿は、ここにおいて観る者の胸を締めつけることになる。

『オクジャ/okja』
『オクジャ/okja』より

 この人間と動物の間に見られる搾取の構造は、企業と貧しい生産者の間にも、アメリカと韓国の間にも、そして社会における多くのシステムや関係性の中にも存在する。だが、ミジャとオクジャの間にある、金銭や権力を度外視した純粋な愛情の関係は、それらの価値観の外にあるものだ。本作でティルダ・スウィントンやジェイク・ギレンホールなどの演技力ある俳優が(勇敢にも)演じるのは、そんな誰かの幸せを踏みにじって権力を行使するということの罪に気づけなくなってしまった人々だ。

『オクジャ/okja』
『オクジャ/okja』より

 とは言え、それは映画を観ているわれわれも同じかもしれない。食卓に置かれる食べ物が生き物の命だったという事実や、生命を直接奪う役目を果たしている人々の存在、そしてミジャのように胸を痛めている者がいるかもしれないということを忘れ、多くの人が何の罪悪感も抱かず、食べ物を口に運ぶことがある。

 社会にはあらゆるところ、さまざまな形で、誰かが誰かを踏みつけるような仕組みが存在している。誰かの悲しみを犠牲に何らかの恩恵を受けている人々は、まず最低でもそれに気づく義務があるのではないだろうか。本作は、ミジャやオクジャのつながりや社会の側面を描きながら、そう訴えかけているように思える。(文・小野寺系)

Netflixオリジナル映画『オクジャ/okja』独占配信中

#間違いなしの神配信映画

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