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『機動戦士ガンダム』ドアン声優・武内駿輔、古谷徹に学んだ役者像 いつか越えたい17歳の自分

堂々とククルス・ドアンを演じた武内駿輔
堂々とククルス・ドアンを演じた武内駿輔

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の名エピソードを映画化する『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(全国公開中)で、ジオン軍の脱走兵ククルス・ドアンの声を担当した武内駿輔が、主人公アムロ・レイを演じた大先輩・古谷徹への思いと共に、役者として見据える未来を語った。

アムロ×ドアン特別対談『ククルス・ドアンの島』インタビュー【動画】

 『ククルス・ドアンの島』は、残敵掃討任務のために、ある孤島に降り立った15歳のアムロ・レイと、歴戦の兵士ドアンの出会いを描く長編アニメ。兵士たちから「帰らずの島」と恐れられる孤島で戦争孤児を養いながら暮らすドアンは、ある秘密を抱えながら、一度は敵として対峙したアムロを介抱し、大人としての生き様を背中で教え導いていく。

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 「テレビシリーズのドアンは、許されない過去の贖罪のために子供たちを導いている印象が強かった気がしますが、映画のドアンは一人の大人として小さな子供たちを手助けしている。アムロに対しても、本来は敵であるという複雑な思いを悟らせないように、大人として向き合っている気がしたので、その印象を大事にしました」という武内。24歳にして、持ち前の低音ボイスを生かし、古谷が演じるアムロを相手に大人として向き合った。

 アフレコは個別の収録となったが、古谷や古川登志夫らが演じる、ホワイトベースクルーの声を受けて収録する機会に恵まれた。43年前から担当するキャラクターを、当時のままに演じるベテラン勢の声を聞きながら収録に臨んだ武内は「正直、ビビりましたね。すごく衝撃を受けました」と告白する。

武内が演じたククルス・ドアン(C) 創通・サンライズ

 「これは古谷さん自身もおっしゃっていたことですが、テレビシリーズは、当時の古谷さんが抱えられていた、若者ならではの葛藤がアムロの苦悩にシンクロしていて、すごく魅力的なキャラクターになっていた。実際の年齢感が合致したことで、相乗効果が生まれていたと思うんです。『ククルス・ドアンの島』では、その相乗効果を、これまでに培った腕で再現されている。アムロのようにリアルな人間の感情の機微を反映するキャラクターで、それをされていることに脱帽です。自分にとってもすごく学びがありました」

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 自身は、17歳にして「アイドルマスター シンデレラガールズ」のプロデューサー役に抜てきされ、声優の世界へ飛び込んだ。武内は「プロデューサー役は自分にとってすごく大きい存在です。先ほどの古谷さんの話でいうと、僕の場合は、まだ当時の演技の方がいいと思ってしまう。アニメをやったことがなくて、もがきながら何かを絞り出そうとしていた点がキャラクターとマッチしたというか。今でも観返して『ああ、うまいなぁ』って(笑)」と語る。

 「今の方ができる役柄は増えたし、プロとしての技術も向上しました。ただプロデューサー役は、生死をかけている感覚というのでしょうか。それまでの自分にないものを絞り出そうとしている感じがすごくいいなと。『ククルス・ドアンの島』の古谷さんを観て、いつか僕も、当時の自分を越えることができるんじゃないかなって。そういう意味では、自分の原点的な存在が明確にあるっていうのは、すごい幸せなことだと思います」

 「1980年代の作品というか、時代の空気や雰囲気全体が大好きなんです。今回のように、当時のスタッフの方々が手掛ける作品に参加できたことは、当時と現在の架け橋になれたような気がして、とても光栄でした」と語る武内の言葉は、先人たちへのリスペクトにあふれている。「ドアン役は、当時と今の時代の架け橋になれたような気がして本当にありがたかったですし、これからもこうした作品に参加したいなと思います。今の自分があるのは、先人の功績があってこそだし、その積み重ねがあって今の業界がある。これからも、昔と今を一本の歴史としてつなげる存在になれるような作品に挑戦していきたいですね」

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 ドアンのように人を導くキャラクターを演じることも多い武内だが、大人を演じるうえで「取り繕わないことが一番大事」だという。「取り繕うほど子供っぽくなるというか、『若い人が無理してやっているんだな』と映ってしまう気がするんです。ファンタジーとしての大人を演じるのであればそれでもいいのですが、『ガンダム』のような世界観の作品では、無理に等身大以上の自分を見せようとしすぎないように、一歩引いてキャラクターと向き合うようにしています」

 そうした役を担当するうえで、低音ボイスは大切な武器だ。しかし武内は、役者としてそれだけに頼るわけにはいかないと覚悟をのぞかせる。「武器の性能に甘んじていたら腕っぷしは落ちていきますよね。最大の武器は、最大の弱点にもなり得るというか。褒めていただける要素であるほど、誰よりも自分がその武器について考え、バランスを保たなくてはいけない。逆に言えば、自分の最大の弱点って、他の人が持っていない武器であったりもしますよね。表裏一体な気がするので、常にどちらの視点も持つように心がけています」

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 その言葉の通り、映画『アナと雪の女王』では、雪だるまのオラフを演じるなど、幅広い役に挑戦している。「時として自分の武器を全く使わないというのも、長持ちさせるための腕というか。そればかりに頼ると、いざ得物がダメになったときにどうなるんだとも思うので、全く真逆のこともできるようにしておく。その意識は持っています。そのうえで違う事をした時に驚いていただけたら、取り組みをしている甲斐があったなと思いますね」(編集部・入倉功一)

アムロ・古谷徹×ドアン・武内駿輔『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』スペシャル対談 » 動画の詳細
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