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4度の延期でお蔵入り寸前…押井守監督、唐田えりから4人主演作の上映に安堵

お蔵入り寸前から一夜限りの上映!- 押井守監督
お蔵入り寸前から一夜限りの上映!- 押井守監督

 『攻殻機動隊』シリーズなどで知られる押井守監督が5日、テアトル新宿で行われた映画『血ぃともだち』の一夜限りとなるイベント上映に出席。お蔵入り寸前だった本作の上映に感慨深げな様子を見せた。この日は、本作のワークショップの演出を担当した山口淳太監督も司会として登壇した。

【画像】主演の一人として名を連ねた唐田えりか

 『血ぃともだち』は、本広克行監督の『ビューティフルドリーマー』、小中和哉監督の『星空のむこうの国』、上田慎一郎監督の『ポプラン』に続く、映画実験レーベル「Cinema Lab(シネマラボ) 」の第4弾作品。私立高校の献血部で活動する4人の女子高生が、ひょんなことから落ちこぼれヴァンパイアと出会い、彼女を養うことを決意する。唐田えりか尾碕真花天野菜月日比美思の4人が主演を務めた。

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 もともと2020年4月に公開予定だった本作は、コロナ禍で4度の公開延期を余儀なくされた。その後、制作から時間が経ち過ぎていること、他のシネマラボ作品の公開の兼ね合いなど諸事情が重なり、お蔵入り寸前となっていた。しかし、本作を劇場で観たいというファンの声が届き、一夜限りのイベント上映が決定。押井監督は「本来ならここにかわいらしい女の子が4~5人並ぶ予定だったんですが、今夜はオヤジ二人ということでとても残念」と胸中を明かし、「今夜一回だけの上映です。しばらく観る機会はないので、目ん玉を開けて観ていってください」と観客に呼びかけた。

主演の唐田えりか、尾碕真花、天野菜月、日比美思 - (C)八八耗/映画「血ぃともだち」製作委員会

 「Cinema Lab(シネマラボ) 」は、限られた制作予算を条件に監督のクリエイティブの自由を保証するということもあり、「ロケ地まで遠くて、片道2時間半。往復5時間かけて現場に通っていた。準備も大変で、とにかく時間がいくらあっても足りなかった」と苦労が多かったいう。しかも、キャスト陣は未成年だったため20時までしか撮影できず、押井監督は「もともと高校生の映画って20代くらいの俳優なので、リアルじゃないと思っていた。だから高校生を描くなら実年齢でやってみたいと思ったのが運の尽きだった。労働基準法っていうのをコロッと忘れてた」と思わず苦笑い。

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 フレッシュな役者とのタッグに、「一番下の牧野(仁菜)が当時15歳で、普通なら会話も通じない。ただ(撮影前に1か月ほど行われた)ワークショップをやったおかげで会話ができた」と振り返る押井監督。話のきっかけとして、映画『ブレードランナー』を観ているかという質問を投げたが誰も観ておらず、いきなり会話が終わってしまった経験もあったそうで、「明らかに(自分とは)違う人間なんだよね。異文化だなと。でもこれはテーマになると思ったんですよ。(『ブレードランナー』を手掛けた)リドリー・スコット監督は、異文化をめぐる葛藤をテーマにしてきたんですけど、僕も女子高生の世界というのは異文化なんじゃないかと捉え直した」と発見もあったと明かす。交流の一つとして、キャスト陣にスマホを渡して撮影してもらったそうで、劇中で使用した箇所もあると明かした監督は「あのカットは自分たちが指示しても撮れない。自分も気に入っているシーンなのでぜひ観てほしい」とアピールした。

『血ぃともだち』ポスタービジュアル - (C)八八耗/映画「血ぃともだち」製作委員会

 「こんなにもたたられた映画は生まれてはじめて」とも告白した押井監督。「呪いがかかったんじゃないかと思うほどいろいろあって、4年目にしてようやく公開できましたからね。いろんなことがありすぎて駄目かと思った。でもそうなると、頑張ったあの女の子たちに申し訳ない。関係者の努力のおかげでここまでできた」と安堵の表情を浮かべる。

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 押井監督にとって、本作は普段の作風とは違うものになったという思いがある。「いつも僕が撮ってきたような、仕掛けがあるような、捻りまくった映画とだいぶ違います。僕が考えたのは、この女の子たちをいかに生き生きと撮るか、彼女たちの実年齢なりの良さ、生命感というものをできるだけ忠実に撮ろうと思いました」と語ると、「いつもなら、もっと捻くれたものの言い方をするんですけど、今回の映画はそうしか言いようがない。今夜は一回限りなので、目撃してくれたお客さんに感謝します」と締めくくった。(取材・文:壬生智裕)

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