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ミヒャエル・ハネケ監督が描く老夫婦を描いたパルムドール受賞作品とは? (ニューヨーク映画祭(50th N.Y.F.F))

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ミヒャエル・ハネケ監督
ミヒャエル・ハネケ監督

 現在開催されている第50回ニューヨーク映画祭(50th N.Y.F.F)に出品されている今年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品『アムール(原題) / Amour』について、ミヒャエル・ハネケ監督が語った。

 同作は、パリに住んでいる80代の老夫婦ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアン(エマニュエル・リヴァ)は、共に過去に音楽教師をしていた。ある日、教え子が開くコンサートに足を運ぶが、そこでアンが脳卒中で倒れてしまう。彼女はかろうじて死は免れたものの、半身麻痺という後遺症が残ってしまった。だが、彼女の強い意思から、自宅での介護を要求し、看護師と夫が介護を始め、徐々に彼女の病状が悪化していく中で、夫婦愛が試されていくドラマ作品。監督は、映画『白いリボン』でもカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しているミヒャエル・ハネケがメガホンを取っている。

 この映画の制作には、親戚からインスピレーションを受けたそうだ。「今作は僕が好きだった叔母に影響を受けたもので、彼女は亡くなる間際、ものすごく苦しい思いをしていて、それを見ていた僕は辛い体験をしたことがあった。もっとも、それがインスピレーションにはなったが、実際のストーリーは彼女とは関係ないものなんだ」と明かした。

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 ジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・リヴァのキャスティング過程については「脚本はジャン=ルイ・トランティニャンを念頭に入れて執筆していたため、彼が出演しなかったら、この映画を製作することはできなかった。彼は素晴らしい俳優で、言葉を発せずに深い意味合いを持たせる演技をしてくれた。エマニュエル・リヴァはジャンとは違い、僕の中で昔の彼女は、若い男性をたぶらかしてしまう母親のようなイメージがあったが、しばらく彼女の作品を観ていなかったために、この年齢に適した他の女優たちとともにオーディションを行ったんだ。ただ、最初のオーディションから、彼女がこのアン役に理想の女優であることがわかったんだ。彼女も素晴らしい女優だが、ジャンと共演することで真実味のあるカップルだと思ったことも理由の一つだ」と語る通り、映画はこの二人の演技が魅力になっている。

 エマニュエル・リヴァの映画内での身体的な挑戦について「彼女が今作の脚本を読んで、僕とキャラクターについて話し合ったときに、何か脚本の内容でナーバスになるような難しいと思うシーンがあるかと聞いたら、彼女はヌードシーンを言及したんだ。だが僕は、このシーンは必要不可欠なシーンで、そのシーンを省いて製作することはできないと告げたら、彼女は女優エマニュエル・リヴァとしてではなく、アンという役柄を通して我慢する形で演じてくれたんだ。もちろん、僕も彼女のそんな演技をできる限り威厳のあるように撮影したつもりだ。それは、アンという役の身体的衰えをあえて、(演出で)大げさにしなかったことでもわかってもらえると思う」と語った。

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 映画内のキャラクター設定が80代の老夫婦であるため、これまでの夫婦生活の背景について俳優と事前に話し合ったりはしたのだろうか。「僕は夫婦生活の背景を事前に議論したり、キャラクターの背景を話し合ったりすることは好きではない。なぜなら、(キャラクターの背景は)セットで俳優とのコミュニケーションを通して作り上げていくため、キャラクターの背景を事前に議論する必要もないと思っているからだ。さらに、キャラクターの背景を語ってしまうと、このキャラクターを演じる俳優が、状況によって演じることをせずに、むしろ状況によって意見を持ってしまう危険性もあるからだ」と彼らしい演出方法について話した。

 映画は、ミヒャエル・ハネケの重厚な演出によって、老夫婦の究極の愛が描かれている作品に仕上がっている。まさに、パルムドール作品にふさわしく、観賞後に強烈な印象を残していく。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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