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『STAR SAND -星砂物語-』満島真之介&三浦貴大 単独インタビュー

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『STAR SAND -星砂物語-』満島真之介&三浦貴大 単独インタビュー

共演できるよう念を送っていた

取材・文:坂田正樹 写真:高野広美

1945年、沖縄のある小さな島。戦火を逃れ、洞窟に身を隠す日本とアメリカの脱走兵・隆康(満島真之介)とボブ(ブランドン・マクレランド)は、生活を共にしながら交流を深めるが、ある日、怪我のために除隊を余儀なくされた隆康の兄・一(三浦貴大)が洞窟にやって来たことから不穏な空気が流れ始める。戦争に翻弄され、ぶつかり合う弟と兄を、迫真の演技で表現してみせた満島と三浦。かねて共演を切望していた二人にとって、映画『STAR SAND -星砂物語-』は“奇跡”と“思い出”に彩られた運命の一作になったようだ。

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戦争に対して自分なりに“思う”ことの大切さ

満島真之介&三浦貴大

Q:本作は沖縄戦が背景になっていますが、沖縄出身の満島さんはこの戦争をどのように教えられてきたのでしょうか。

満島真之介(以下、満島):沖縄以外で生まれた人たちと比べると、授業で取り上げられたり、資料映像を観たり、何倍も多く触れていると思います。ただ、学校教育がどうというよりも、体に銃弾が残っている人、足や腕を失くした人、耳が聴こえない人、目が見えない人など、戦争によって被害を受けた人たちが僕の周りに当たり前のようにいましたから。生活の中に(戦争の爪痕が)存在していたことが大きかったです。だから、東京に来て「8月15日って何の日?」とか「原爆っていつ日本に落とされたの?」とか、同世代の方がそういう話をしているのを耳にしたときは、とても悲しかった。沖縄の慰霊の日なんて、知るはずもないでしょうし……。

Q:三浦さんは東京出身ですが、本作に出演する前は、沖縄戦についてどんな認識を持たれていましたか?

三浦貴大(以下、三浦):もともとは真之介が言ったように、戦争の歴史について認識不足のところはあったのですが、役者という仕事に就いてからは戦争を題材にした映画も多いので、一般社会で生活されている同世代の人たちよりは、考える機会は多いのかなと思います。ただ、真之介のような考えを持っている人とはなかなか出会わないですね。これは正しいかどうかはわからないですが、僕の周りには戦争を体験した人がほとんどいなかったので、戦争というものに対して、「自分が答えを出しちゃいけないんじゃないか」とか、「戦争ってこういうものだよね」「昔の人はきっとこうだった」とか、安易に考えることすらダメなんじゃないかと思っていた節がある。だから、戦争を体験した人が身近にいた真之介と話をしていると、正解、不正解は別にして「自分も戦争に対して思う気持ちをちゃんと持たなきゃいけない」と素直に思いましたね。真之介に出会って意識が変わっていきました。

伊江島で蚊に刺されながら友情を育む

満島真之介&三浦貴大

Q:自身の小説を映画化したロジャー・パルヴァース監督は、「戦時に戦わないという裏切り」が生涯の主題と語っています。お二人は脚本を読んだとき、どんな思いを抱きましたか?

満島:監督は、『戦場のメリークリスマス』で大島渚監督の助監督を務めたり、宮沢賢治を50年研究したり、ハーバード大学の大学院で修士号を取得したり、アメリカからオーストラリアへ国籍を移したり、さまざまな体験をしてきた方です。自分が歩んできた人生のカケラ一つ一つを全てこの作品に詰めている気がしました。劇中、ビンに入った星砂が出てきますが、まさに監督の人生を象徴しているように感じます。つまり、史実に基づいてとか、思想がどうかとか、そういったことではなく、監督が体験してきた「人と人との出会い」を色濃く描いているところに感銘を受けました。この映画には「平和」や「反戦」といった言葉は一切出てきません。大きなことよりも、まず目の前にいる人をしっかり見つめることで、国籍も年齢も敵味方も、全て超越できるんだよと。

三浦:僕も全く同感ですね。この仕事をやっていると、戦争に対してすごく繊細に考えてしまうところがあって、もちろん僕自身は「戦争はNO」という意識はあるんですが、それを踏まえた上で「どういう苦しみがあったのか」「どういう悲しみがあったのか」を発信するのはなかなか難しい。だから、この作品の脚本を読んだとき、戦争がテーマになっていますが、人間と人間の関係性というところを色濃く描いていたので共感しました。それに加え、真之介と仕事がしたいとずっと思っていたので、兄弟役で共演できたことが何よりもうれしかった。これも出会いですよね。

満島:僕も前々からずっと一緒に作品をつくりたいと思っていたのでうれしかったです。実は「三浦貴大が兄役になりますように」って、ずーっと念を送っていたんですよ!

三浦:ホントに? すごいなぁ、念が強すぎる!(笑)

満島:いやぁ、こんなことが起きるんですね。ロケ地が沖縄の伊江島だったんですが、海と緑に囲まれた島で約1週間、二人で酒を酌み交わし、蚊に刺されながらいろんなことを語り合いました。撮影が終わっても、寝る以外ずっと部屋に帰らずに話し続けていましたよ。濃密な時間を共有できたことが、今でも根底でつながっている気がしますね。クランクアップして以来なかなか会えていないのですが、久しぶりに会っても言葉はいらず、目を見るだけで伝わる信頼関係があります。

三浦:確かに役者って結構、場所に助けられることが多くて、今回、伊江島で撮影できたことは、この映画の一番大きな根底になっているんじゃないですかね。真之介にメールをときどき送っているんですが、忙しくてなかなか会ってくれないという現実はありますけど(笑)。

満島:いやいや! 無視してるわけじゃないですよ! すごく会いたいから返信はすぐにするんですが、肉体がそこに行けない……。だから今日、会うことができて本当にうれしいです。

ディスカッションでつくり上げた演技

満島真之介&三浦貴大

Q:本作はパルヴァース監督のデビュー作ですが、撮影はスムーズにいきましたか?

満島:監督は、つねに「キミはどう思う?」というスタンスで、ディスカッションをよくやりました。自身が書いたものが映像として具現化されていくことを、まるで少年のように喜んでいました。例えば、隆康がアメリカ兵のボブにシェービングクリームを塗るシーンがあるんですが、そこは二人に全て任せると。「すごく大切なシーンだから」とだけ言い残し、シェービングクリームがそこにあるだけ。この作品の根底のテーマである言葉や人種、年齢、敵味方を超えた関係を一番表現できる場面で、伊江島で一緒に過ごした時間が浮かんでくるんだろうなと思いました。観る人によっては同性愛のように見える人もいるでしょうし、そこはそれぞれが感じたままに受け止めてほしい。それくらい愛が深まっているシーンです。伊江島での奇跡的な時間を一緒に過ごしたブランドンとだからできた表現だと思います。

三浦:僕はあまり自分から意見を言って芝居をやることはなく、監督が伝えたいことを正確に演じる、ということをいつも考えながらやってきたので、今回は珍しいやり方をしたなと。「監督、どう思います?」って聞くと、「キミはどう思う?」っていう感じだったので、普段使わない脳みそをかなり使いましたね。例えば、軍帽を取ったときに、頬に大きな傷があるんですが、軍帽をなかなか脱がなかったのは「これ以上弟に弱いところを見せたくなかった、あるいは軍人の誇りもあって隠しているんじゃないですか?」と言うと「いいですね!」と言ってくれたり(笑)。そんなやり取りが多かったですね。

満島:今考えると、本当に幸せな時間だった。このスタッフ、キャストでなかったら、絶対に成し遂げられなかったです。今度プライベートで伊江島に行こうって二人でずっと話しているので、ぜひ実現したいです。


満島真之介&三浦貴大

お互いをタカちゃん、真之介と呼び合う間柄。スキンシップを大切にする満島が握手を求めたり、肩を組んだり、顔を寄せ合って撮影したり、熱いアプローチを繰り出しても、うれしそうにそれを受け止める三浦。伊江島で育んだ絆は、本当の兄弟をも超越した愛に満ちていた。

(満島真之介)スタイリスト:Baby mix ヘアメイク:齋藤将志 (三浦貴大)スタイリスト&ヘアメイク:山崎惠子

映画『STAR SAND -星砂物語-』は8月4日より東京・ユーロライブほかにて全国順次公開

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