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『ジャングル・ブック』ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ 単独インタビュー

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『ジャングル・ブック』ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ 単独インタビュー

ジャングルが全部CGなんて、誰も気がつかない

取材・文:石神恵美子 写真:金井尭子

『アイアンマン』などのジョン・ファヴロー監督が、ディズニーの名作アニメを最先端技術で実写映画化。ジャングルで育った少年モーグリが、人間への復讐心に燃えるトラの存在をきっかけに壮大な冒険に身を投じていくさまを、モーグリ以外フルCGにして、圧巻の映像美でつづる。久しぶりに大作を手掛けたファヴロー監督が、唯一の実写キャラとして主演を務めた新星ニール・セティと来日し、本作の撮影秘話から日本公開を心待ちにしているわけなどをとことん語った。

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観る者を笑顔にする演技!

ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ

Q:演技経験なしで、大役に選ばれました。オーディションはどうでしたか。

ニール・セティ(以下、ニール):オーディションでまず、どんなスポーツしているの? って聞かれて、テコンドーと答えたんだ。そしたら、やってみてと言うから、テコンドーを披露した。すごく気に入ってもらえて、飾らずにありのままの自分でやったのが良かったんじゃないかと僕は思っているよ。

ジョン・ファヴロー監督(以下、監督):彼のオーディションは素晴らしかったよ。ニューヨークの小さい部屋で、彼がセリフを読むのを録画したんだけど、彼の人柄が伝わってきた。それにテコンドーを習っているというからアクションも大丈夫だと思ったし、自信に満ち溢れていて、とても魅力的な性格の持ち主だと思った。彼の演技は観る者を笑顔にしてくれるんだ。僕が彼のビデオを見せた人はみんな笑顔になったよ。

Q:監督はどうして名作アニメの実写化を引き受けたのでしょう?

監督:ディズニーが『ジャングル・ブック』を実写化しようとしていると聞いても、僕は興味を引かれなかった。『シンデレラ』の実写作品でやったように、実際にセットを組み立てて、ジャングルに撮りにいくのかと思ったからね。過去には本物の動物を使って撮影した『ジャングル・ブック/少年モーグリの大冒険』(日本劇場未公開)もあったけど、スタジオが今作で何を望んでいたか全くわからなかったんだ。でも一度話をしてみたら、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』や『アバター』といった作品の名が出てきて、彼らがコンピューター技術を使って世界観を構築するということに積極的だとわかった。監督にとってこの上ない機会だと思った。全てのキャラをデザインできるし、自然に関しても、本物に似せながら、芸術性を求め、変化を加えることも出来るからね。

Q:どの時点で、モーグリだけ実写にして、その他をフルCGにしようと思ったのでしょうか。

監督:かなり早い段階だね。主演のニールが決まっていろいろと楽になった。彼がセリフを言うと、そのシーンが目に浮かぶからね。でもニールが加わるずっと前から僕は計画を立てていたんだ。ほぼアニメ映画のような作品だから、アーティストと一緒に(どうなるかを)ドローイングしたり。撮影開始が近づくにつれて、ビジョンはますます明確なものになっていった。背景をペインティングにしようとか、動物のキャラはどんな見た目だとか。だから大きな部屋がアートワークでいっぱいだった。俳優たちが来るたびに、どうなるかを説明するためにね。おかげで言われなかったら、ジャングルで撮影していないと気付かないだろう。あと、動物を実物より大きくしているとか、表現を豊かにするために、ちょっとしたことだけどいろいろな選択をしているんだ。

二人三脚で挑んだ撮影!

ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ

Q:動物がCGなので、一人で演じなくてはいけませんでしたね。

ニール:全シーン、一人で演じなくちゃいけなかった。でも撮影には、パペットがいたんだ。例えばバルーとかに話しかけるシーンでは、僕はパペットを持った人を相手に演技していた。たいていは、ジョンがそのパペット役をしてくれたんだ。パペットに向かって話せばよかったから、演技しやすかったし、よりリアルな感じが出せたと思う。

Q:なるほど、難しくなかったんですね。

ニール:最初は難しいなって思ったけど、慣れたら全然平気だった。モーグリは流れに身を任せていくタイプで、でも物事が深刻になると頑固者だっていうのがわかる。それって根本的には、僕自身だなって思ったよ(笑)。普段の僕自身でよかったから、モーグリに成りきるのは難しくなかった。

Q:お気に入りのシーンは?

ニール:バルーと一緒に川で泳ぎながら歌っているシーンかな。その撮影がとても楽しかったから。この時も、ジョンが僕と一緒にタンクの水の中に入って、バルーの頭の位置に立ってくれたんだ。それで(ジョンをバルーと思って)話をして、笑って歌って。

監督:少しでも自然で楽しい演技になるようにね。僕は3人の子供の父親だから、(どうすればいいのか)わかるんだ。ニールみたいな賢い子相手には、面白くやらなきゃ、すぐに飽きられてしまうからね。良い演技を引き出すためには積極的に関わらなくてはいけない。パペットを使ったり、ふいに驚かしたり、そういった一つ一つのささいな瞬間が、彼の異なるリアクションを引き出すことになる。それがモーグリとしての良いリアクションになるから、その予期せぬ自然なリアクションを求めて、僕はできる限りのことをしたんだ。おかげで、彼の演技にさまざまなスパイスを加えることができたんじゃないかと思っているよ。

ハリウッドの映画監督は寛大!

ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ

Q:監督にとって困難だったことは何ですか?

監督:実写のモーグリが、(CGである)フェイクの動物に触れる描写はどれも難しかったね。映画では普通見ないものだからね。モーグリがオオカミの毛にさわるシーンとか、たいていCGと実写を触れ合わせることはしないんだ。クマの上に乗っかるといったシーンでは、水力で動く巨大なパペットを作って、アニメーションで歩き方をデザインしておいて、モーグリが乗った時にその通りに動くようにしたんだ。そうしてクマとマッチさせた。技術的にどうするか、かなり計画を練ったね。

Q:『アバター』のジェームズ・キャメロン監督からもアドバイスをもらったそうですね。

監督:キャメロンは僕の旧友で、最高の映画監督でもある。彼が『アバター』で使ったツールやシステムを今作にたくさん使った。ハリウッドの映画監督はとても寛大だと思う。自分が学んだことを、次の世代と分かち合おうとするんだ。『アバター』の時と同じスタッフが、同じ技術を用いて、この作品づくりに携わっていると聞いた彼は、セットを訪ねてくれた。とても協力的だった。彼は今新しい『アバター』を作っている最中だから、僕がどうやって撮影しているかを見学するのは、彼にとっても興味深かったと思う。映画監督の仕事は、それまで確立されてきたものをさらに発展させていくことでもあると思うからね。『スター・ウォーズ』のプリクエル・トリロジーのためにジョージ・ルーカスもたくさんの技術を発展させた。デジタルキャラはルーカスによって、発展を遂げたよね。僕が尊敬する映画監督たちが開発してきた技術をできる限り使って、この作品を作りたいと思った。

一人前の男になる様は日本映画に近い

ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ

Q:完成した映画を観て、どうでした?

ニール:9回も観たよ! 大好きさ! 観るたびにいつも笑っているよ。とても面白いからね。1シーンごとの撮影で困惑したこともあったけど、完成した映画を観たら、なるほど(こうなったのか)って理解できて、すごいなって思ったよ。

監督:実は日本で観るのが待ち遠しいんだ! もちろんアメリカではすでに観ているけど。アメリカで映画は人気だけど、ほとんどが若者男子向けのアクション映画だ。ヒーロー、大爆発、宇宙船とかね。そんな中、この映画がめずらしく上手くいったんだよ。とてもエモーショナルなストーリーに、舞台はジャングルで、テクノロジーもなければ、スーパーヒーローも出てこないのに。でも、この映画はわくわくに満ち溢れていて、モーグリが居場所を探すという、感情的な作品だ。もちろん自然との結びつきもかなり強い。人生の教訓を学んで、一人前の男になる。そういうところに、僕はこの映画にはアメリカ映画というよりも、日本映画らしさを感じていた。なんてったって、僕は日本映画の大ファンなんだ。宮崎駿のアニメを観て育ち、ジョージ・ルーカスが黒澤(明)に影響を受けたことを知ったり。そういった全てに影響を受けて、監督としての今の僕がいる。20年間映画づくりをしてきたけれど、その中でも最も挑戦的だったといえる本作が、日本でどのように受け止められるのか楽しみで仕方ない。


ジョン・ファヴロー監督&ニール・セティ

とにかく日本が大好きなファヴロー監督は、約20年ぶりの来日に大興奮の様子。今回、東京ディズニーシーや三鷹の森ジブリ美術館を訪れたそうで、初来日となったニールにゴリ押しする一幕も。そんな2人のほっこりするやりとりに、撮影中もきっとこんな感じだったのだろうと想像がつく。共演者がいないにもかかわらず、監督との楽しい撮影だったと振り返るニールの言葉を裏付けるような瞬間だった。

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映画『ジャングル・ブック』は8月11日より全国公開

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